従業員の個人住民税の特別徴収について再確認!
平成28年より、多くの地方自治体で給与支払者に対する個人住民税の特別徴収義務の取り締まり厳格化の動きがスタートしました。
今回はその個人住民税の特別徴収制度についてご説明いたします。
個人住民税とは?
個人住民税は、個人の所得に対して課される地方税です。
個人の所得に対して課される税金には個人住民税のほかに所得税(国税)がありますが、両者には課税の時期に大きな違いがあります。
所得税は現年所得課税、個人住民税は前年所得課税
所得税は現年所得課税を原則としており、その年の所得に対する所得税は年度内に納付する方式を採用しています。これに対して個人住民税は前年所得課税を原則とし、その年の所得に対する個人住民税は翌年度に納付する方式を採用しています。
Tips給与明細書で差し引かれている所得税は”その年の所得”に対する所得税、住民税は”前年の所得”に対する個人住民税です!
個人住民税の納付方法は2通りある
この個人住民税の納付方法には、”普通徴収”と”特別徴収”という2つの方法があります。
普通徴収 | 納税者本人が直接納める方法 |
特別徴収 | 給与支払者が納税者の給与から天引きして納める方法 |
給与支払者には特別徴収義務がある
地方税法において、給与支払者は特別徴収義務(従業員から個人住民税を徴収して納付する義務)を負っています。
POINT平成28年まではこの義務が形骸化し、実務上は普通徴収による対応が横行していた。その結果、個人住民税の滞納額が年々増加して深刻な問題となったため、平成28年より全国的に特別徴収義務の取り扱いが厳格化された。
特別徴収にあたり給与支払者が行わなければならないこと
給与支払者は、従業員の給与から毎月個人住民税を徴収し、地方自治体に納付することが必要です。
各従業員の給与から徴収すべき個人住民税は、毎年5月ごろに地方自治体から一覧表で送付されます。
その一覧表に6月から翌年5月にわたり徴収すべき個人住民税が記載されているので、これに従って給与から毎月徴収し、同封の納付書により収めます。
従業員が途中で退職したときは?
従業員が12月までに退職した場合と、1月以降に退職した場合で取り扱いが異なります。
12月までに退職したときは、退職月分までの個人住民税を徴収し、翌月以降の住民税は徴収不要です(各自治体に普通徴収への切替手続きを行う)。
1月以降に退職したときは、残り(5月分まで)の個人住民税を退職時に一括徴収し、収める必要があります。
特別徴収で給与支払者が注意すべきこと
従業員が退職した場合、次の2点は特に間違いが多いので注意してください。
① 退職した従業員について地方自治体への普通徴収への切替手続きを失念していた
② 退職した従業員分の個人住民税を減額せず、納付書に印字された金額のまま納付を続けていた
POINT特別徴収分の個人住民税の納付書は、毎年5月ごろに1年分(6月~翌年5月までの12回分)がセットで届きます。この納付書に印字されている税額は、従業員が来年5月まで一年間在籍していることを前提とした金額なので、途中で退職者が発生した場合には納付書の印字額の加筆修正が必要です。
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