はじめに
個人事業主としてご家族に手伝ってもらうとき、「給与を経費にできるのか?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
実は、家族に支払う給与は原則として必要経費になりません。しかし「専従者給与」という制度を利用すれば、一定の条件を満たすことで経費算入が可能になります。
本記事では、青色申告を行っている個人事業主の方を対象に、専従者給与の制度概要と基本的な要件を解説します(白色申告の場合は「事業専従者控除」という別制度があります)。さらに、「生計を一にする親族」の範囲や実務上の注意点についても触れますので、ぜひ最後までご覧ください。
専従者給与とは?
専従者給与とは、個人事業主が生計を一にする親族に支払う給与のうち、一定の要件を満たしたものを必要経費に算入できる制度です(国税庁「青色事業専従者給与」)。
通常、家族への給与は経費にできませんが、この制度を使えば節税につながる可能性があります。
基本要件(青色事業専従者給与の場合)
国税庁の案内によれば、以下の条件を満たす必要があります。
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青色申告をしていること
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「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に税務署へ提出していること
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専従者がその年を通じて 6か月を超えて事業に専ら従事していること
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給与額が労務の対価として 相当であること
届出期限について
届出書は、以下の期限までに提出する必要があります。
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その年の 3月15日まで
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または、事業開始日から 2か月以内
この期限を過ぎてしまうと、その年の給与は経費算入できなくなりますので注意が必要です(国税庁「タックスアンサー No.2075」)。
「生計を一にする親族」とは?
「生計を一にする」とは、同じ家計で生活費を賄っている状態を指します(国税庁「タックスアンサー No.2025」)。
対象になるのは、配偶者・子・親・同居している祖父母など。同居していなくても生活費を共有している場合は対象になることもあります。
一方で、仕送りを受けている大学生や別居して独立している兄弟などは、要件を満たさないケースがあるため注意が必要です。
よくある誤解
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学生アルバイトの子ども → 学業が主で「専ら従事」とは認められないケースがある
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給与水準 → 相場より高額だと「不相当に高い給与」と判断され否認リスクあり
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届出の遅れ → 事前提出を忘れると、支払っていても経費にできない
こうした点を押さえておくことで、安心して制度を活用できます。
まとめ
専従者給与は、正しく利用すれば節税につながる制度ですが、要件を満たさなければ経費にできません。特に「生計を一にする親族の範囲」や「専ら従事の実態」は税務調査で確認されやすい部分です。
専従者給与について、不安な場合やよくわからない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は、掲載日時点における法令等に基づいて作成しております。