相続直前の不動産購入にメス!?貸付用不動産評価の「5年ルール」の税制改正論点を徹底解説

相続税・贈与税

1. 相続開始前5年以内取得の貸付用不動産は「時価ベース」評価へ

令和8年度税制改正において、相続開始前または贈与前5年以内に取得・新築した「貸付用不動産」の相続税評価方法の見直し(いわゆる「5年ルール」)が決定されました。

対象物件

被相続人等が相続開始日(贈与日)前5年以内に対価を伴う取引により取得、または新築した一定の賃貸マンション・アパート・収益不動産等

新しい評価方式

従来の通達基準(路線価や固定資産税評価額ベース)ではなく、「課税時期における通常の取引価額(取得価額を基に地価変動等を考慮して算出した価額の80%」に相当する金額での評価

適用時期

2027年(令和9年)1月1日以後に開始する相続・遺贈または贈与から適用

 

2. なぜ「5年ルール」なのか?改正の背景と国税庁の狙い

実勢価格と通達評価額の「乖離」問題

現金を不動産(特に都心部の賃貸マンション等)に換えることで、実勢価格の30~50%程度まで相続税評価額を圧縮できる仕組みが、富裕層の相続税対策として広く利用されてきました。

令和4年4月「最高裁判決(総則6項適用)」の影響

相続直前に多額の借入をして不動産を購入し大幅に税負担を軽減した事例に対し、国税庁が「財産評価基本通達 総則6項(通達の定めにより難い場合の評価=伝家の宝刀)」を発動して否認。最高裁も国税側の主張を認めました

「伝家の宝刀」から「明確なルール化」へ

総則6項は適用基準が曖昧であり、納税者にとって予見可能性が著しく低いものでした。この点について、2024年の「タワーマンション評価見直し」に続き、貸付用不動産に対しても「取得から5年間」という客観的な時間軸の基準を設けることで、税負担の公平性の確保と納税者の予見可能性の担保を両立させる狙いがあります。

 

3. 改正前後の比較と影響

改正前(現行) 改正後(2027.1.1~)
評価額 路線価・固定資産税評価額(+借家権割合等の減額) 取得価額ベースの80%
財産評価の圧縮効果 実勢価格の約30〜50%程度まで圧縮可能 実勢価格の80%程度にとどまる

4. まとめ・今後の対応

「直前の駆け込み節税」から「長期計画的な資産承継」への転換

不動産を活用した資産承継対策そのものが禁止されたわけではありません。取得から5年を経過すれば通達評価が適用されます。今後は短期によらず、10年・20年先を見据えた長期の資産承継計画が必要となっていきます。
また、昨今の物価上昇局面においては、不動産価格が上昇の一途を辿ります。早めの不動産贈与も対策として効果的です。相続時精算課税制度を活用した生前贈与、生命保険の非課税枠の活用など、複数の選択肢を組み合わせた包括的なプランニングを長期視点で考えていきましょう。

 

※本記事は、掲載日時点における法令等に基づいて作成しております。

 

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