オフバランス処理はもう使えない?リース取引の会計処理と最新基準をわかりやすく解説
更新日:2025年11月4日
はじめに
リース取引は、企業が設備投資を抑えながら必要な資産を利用できる便利な仕組みです。しかし、会計処理の方法には「オンバランス処理」と「オフバランス処理」があり、どちらで処理すべきか迷う経理担当者も多いのではないでしょうか。
さらに、2024年9月に公表された新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)により、今後は多くのリース取引が貸借対照表に計上される方向に変わります。本記事では、最新の会計基準と国際基準の考え方を踏まえ、実務上の注意点をわかりやすく整理します。
リース取引の会計処理の基本
オンバランス処理とオフバランス処理の違い
これまで日本の会計基準では、リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に区分されていました。
- ファイナンス・リース: 実質的に資産の購入と同様とみなし、資産と負債を貸借対照表に計上(オンバランス処理)。
- オペレーティング・リース: 通常の賃貸借契約に近い取扱いで、貸借対照表に計上せず(オフバランス処理)。
このため、企業はリース取引を活用して資産・負債をバランスシートに計上せずに済むケースもありました。
国際会計基準(IFRS16)の影響
国際会計基準(IFRS16)では、借手は原則としてすべてのリース取引を貸借対照表に計上します。これにより、リース資産(使用権資産)とリース負債を認識し、オフバランス処理が基本的に廃止されました。
ただし、次のような例外が設けられています。
- 契約期間が12か月以下の短期リース
- 資産価値が小さい少額リース(例:少額の備品など)
これらは認識免除の対象となり、オフバランス処理が引き続き認められます(出典:IFRS第16号「リース」)。
日本基準(企業会計基準第34号)の新ルール
2024年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)は新たなリース会計基準「企業会計基準第34号」を公表しました。この基準では、借手がすべてのリース契約について使用権資産とリース負債を計上する方式を採用しており、国際基準(IFRS16)と整合しています。
適用時期は次のとおりです。
- 本格適用: 2027年4月1日以後開始する事業年度
- 早期適用: 2025年4月1日以後開始する事業年度から可能
したがって、現在は現行基準(第13号)と新基準(第34号)の選択期間にあります。
実務への影響と注意点
貸借対照表への影響
オンバランス処理となると、リース資産およびリース負債が貸借対照表に計上されます。その結果、総資産・総負債が増加し、自己資本比率が低下することがあります。特に、金融機関との契約条件や財務指標への影響を事前に確認しておくことが重要です。
経理システム・実務対応
新基準では、契約管理や会計処理の複雑化が予想されます。主な対応事項は以下のとおりです。
- リース契約情報(契約期間・利率・更新条件など)の一元管理
- 使用権資産の減価償却とリース負債の利息計上
- 経理システムや会計ソフトの設定変更・アップデート
税務上の取扱いとの違い
会計基準が変更されても、法人税法上のリース取引の取扱いは必ずしも一致しません。税務上は、一定の条件を満たす場合「所有権移転外リース取引」として扱われ、損金算入のタイミングや計算方法が異なります(出典:国税庁「法人税基本通達7-3-2」など)。
したがって、新基準適用後も会計と税務の差異調整(別表調整など)が必要です。
まとめ
リース会計は、今後「オフバランスからオンバランスへ」と大きく転換していきます。国際基準(IFRS16)ではすでに導入済みであり、日本基準(第34号)でも2027年度から本格適用が始まります。
経理担当者の方は、自社が新基準を早期適用するかどうかを検討し、財務指標・税務対応・システム整備を早めに準備しておくことが大切です。
出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」(2024年9月13日)/国税庁「法人税基本通達」等