一括償却資産の途中で廃棄・売却!
「除却損は計上できる?」経理担当者が迷うポイントをプロが解説

監修:税理士法人・会計専門チーム

📌 この記事のポイント(要約)
  • 一括償却資産を期中に廃棄・売却しても、未償却残高を「固定資産除却損」として一括で経費計上することはできません。
  • 資産が手元になくなっても、当初の予定通り3年間で均等償却を継続するのが税務上の原則ルールです。
  • 少額減価償却資産などの他制度との区分管理を正しく行い、追徴課税リスクを回避することが重要です。

1. はじめに

会社や個人事業でパソコンやオフィス家具、専門器具などの備品を購入した際、決算や日常の経理処理で「一括償却資産」を選択しているケースは多くあります。

しかし、現場で運用を続けていると、次のような事態が頻繁に発生します。

  • 「一括償却資産として処理していたパソコンが壊れたので、期中に廃棄処理した」
  • 「使わなくなったオフィス備品を他社に売却した」

このとき、多くの経理担当者様や事業主様が直面するのが「廃棄して手元になくなったのだから、残っている帳簿上の未償却残高を『固定資産除却損』として一括で経費に落とせるのではないか?」という疑問です。

一般的な固定資産の感覚で「廃棄=除却損の計上」と処理してしまうと、後の税務調査で追徴課税を受けるリスクがあります。本記事では、税理士の視点から、一括償却資産を期中に処分した際の正しく安全な会計・税務ルールと、実務で陥りがちな注意点について詳しく解説します。

2. 背景・概要について

まずは、一括償却資産の基礎知識と、期中に処分(廃棄・売却)した際の原則的な取り扱いについて整理します。

一括償却資産とは(基礎知識)

一括償却資産とは、取得価額(購入金額)が10万円以上20万円未満の減価償却資産について、法定耐用年数にかかわらず「3年間で均等に損金(経費)算入」できる税法上の特例制度です。(出典:国税庁『No.5403 一括償却資産の損金算入』)

本来、固定資産を購入した場合は、資産の種類ごとに定められた耐用年数(例:パソコンは4年、金属製事務机は15年など)に応じて毎年減価償却を行います。しかし、少額な資産について1点ずつ耐用年数を調べて個別に管理するのは、企業にとって大きな負担となります。

そこで税法では「個別管理を不要とする代わりに、一括して3年間で均等に経費化してよい」という手続きの簡素化(簡便法)を認めています。

期中に処分(廃棄・売却)した場合の原則ルール

では、この一括償却資産を3年の償却期間の途中で廃棄・売却した場合はどうなるのでしょうか。

結論から申し上げますと、期中に資産を処分した場合であっても、事業を廃止した場合等を除き、未償却残高を「固定資産除却損」として一括で経費計上することは認められておりません。

対象の資産が手元からなくなっていたとしても、当初の計画通り3年間かけて均等に償却を継続するのが税務上の原則ルールです。

このルールの背景には、制度の趣旨が強く関係しています。一括償却資産は「個別の資産追跡を免除する」という前提のもと成り立っている制度です。そのため、処分があったからといって特定の資産だけを取り出し、残高を調整する処理は制度の前提と矛盾してしまうため、認められていません。

3. 実務への影響・注意点

ここからは、実務の現場で直面しやすい具体的な疑問や、誤解されやすいポイントについて解説します。

【ポイント】除却損の誤計上は税務調査で否認され、追徴課税のリスクが生じます。

実務で誤解されやすいポイントと税務リスク

現場で最も発生しやすいミスは、資産を廃棄した期に「もう存在しないから」と未償却残高を固定資産除却損として経費計上してしまうケースです。

⚠️ 税務上のリスク注意
これを実施すると、税法上の損金算入限度額を超えて過大に経費を計上したとみなされます。税務調査が入った場合、過大計上分が否認され、法人税等の追徴課税(本税に加えて延滞税や加算税)が発生するリスクがあります。適正な処理を行うよう留意してください。
(出典:国税庁『一括償却資産を除却した場合の取扱い』、国税庁『法人税基本通達7-7-2』)
【ポイント】売却時も3年償却を継続し、得た代金は「雑収入」等として収益計上します。

期中に売却した場合の対価の扱い

期中に一括償却資産を他社へ売却した場合も、基本的な考え方は廃棄時と同じです。

  • 資産の償却処理: 資産を売却しても、3年間の均等償却はそのまま継続します。
  • 売却収入の処理: 売却によって得た代金は、売却した期の「雑収入」などの益金(収入)として収益計上します。

資産の帳簿価格と売却額を相殺して「固定資産売却損益」を直接算出する一般的な処理とは異なる点に留意してください。

【ポイント】処理方法(一括償却・少額減価償却特例・通常償却)の違いによる処分時の扱いを把握しておきましょう。

他の「少額資産ルール」との違い(比較表)

備品の取得時にどの制度を選択したかによって、途中廃棄時の処理が大きく異なります。実務で混同されやすい3つの区分を以下にまとめました。

区分 一括償却資産 少額減価償却資産(特例) 通常の減価償却資産
対象となる取得価額 10万円以上20万円未満 10万円以上30万円未満
(※要件あり)
金額制限なし
(主に20万円以上)
基本的な償却方法 3年間で均等償却 取得した期に全額損金算入 耐用年数に応じて償却
期中廃棄時の除却損 計上不可
(3年償却を継続)
取得時に全額落とすため概念なし 全額計上可能
償却資産税(地方税) 原則、対象外
(非課税)
課税対象 課税対象

特に、中小企業者等の特例である「少額減価償却資産(40万円未満の即時償却)」と「一括償却資産」は混同されがちです。購入時にどちらの処理を選択して確定申告したか、固定資産台帳や過去の申告書別表で必ず確認しておきましょう。

なお、一括償却資産は「償却資産税(固定資産税)」の課税対象から除外されるメリットがあります。途中処分時に除却損が落とせないデメリットがある反面、毎年の地方税負担を軽減できるという制度上のバランスが取られています。

4. まとめ

本記事のポイント

  • 一括償却資産(20万円未満)は、期中に廃棄・売却しても「固定資産除却損」の計上はできない。
  • 資産が手元からなくなっても、当初の計画通り3年間かけて均等償却を続けるのが正しい経理処理。
  • 取得時に「一括償却資産」を選んだのか、「少額減価償却資産の特例」を選んだのかによって税務上の扱いが大きく変わるため、事前の区分管理が不可欠。

💡 税理士からのアドバイス&お問い合わせ

資産を購入した際や廃棄した際の処理は、「どの特例を活用するのが自社にとって一番節税になるのか」「償却資産税まで含めたキャッシュフローはどうなるのか」など、多角的な判断が求められます。

「過去の処理が正しく行われているか不安がある」「自社に最適な資産の経理ルールを整備したい」とお悩みの経理担当者様・事業主様は、ぜひ一度当税理士事務所へご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な税務・会計サポートを提供いたします。

※本記事は、掲載日時点における法令等に基づいて作成しております。